You are my
reason to
be… 2


 午前0時。とうとう日付をまたいでしまった。いくらなんでも遅すぎる。

 もしかしたら本当に、慶介に何かあったんじゃないだろうか?とっくに七瀬とは別れており、その後一人で事故にでも遭っていたとしたら……。携帯電話はここに在る。何か他に、身元のわかるような物を持って行ったのだろうか……?

「どうしよう……。慶介っ……」
 強い不安に襲われた出流(いづる)は、もう零れ落ちる涙を止めることは出来なかった。

 テレビを点け、ニュースの事故情報を確認しながら、ウロウロと部屋の中を所在無く歩き回る。

 どうしたらいいのだろう?寮長に相談した方が良いのだろうか?
 しかし、事故じゃなかった場合、告げ口をするようなかたちになってしまう……。

 もう……、慶介っ、頼むから早く帰ってきて……!







 真夜中、慶介は寝苦しさに目を覚ました。
「……ん、?…出流?」
「………。誰ですか?いづるって…」
「え?」

 目を開けると、何故かベッドで寝ていた筈の七瀬が慶介の布団の中に入り、慶介に覆い被さるように乗っていた。
 七瀬は「あ、確か慶介先輩と寮が同室の……」と、合点がいった顔をしたが、上から退ける様子はない。

「……っど、どうしたんだ?」
「どうしたって……。こんなチャンスなのに、先輩なにもしてくれないんだもん…。僕が体調崩してるから遠慮してるんですか?…こんなのよくある事なんですから、気にしなくていいんですよ?」

「なっ……?」
 驚きのあまり言葉に詰まる慶介に、七瀬は更に熱っぽい微笑みで続けた。
「でも、そういう優しいとこ……好きです」

「………え?」
 慶介は、目をパチパチと瞬かせた。
「……え…って、…気付いてなかったんですか……?」

 七瀬はどうやら、慶介の鈍さを甘く見ていたようだ。
 一瞬ほうけた七瀬だったが、慶介の頬を両手で包むと、いつもの弱々しい彼ではなく、強い瞳で言った。
「好きです。ずっと好きでした。僕を慶介先輩のものにして下さい…」

 七瀬は、慶介の唇に、ゆっくりと自分の唇を重ねた。







 部屋の中では、放送時間を過ぎたテレビの砂嵐の音と、かすかなすすり泣きが響いていた。

「慶介……っ」

 出流が、慶介の布団に包まり、声を殺して泣いていた。


慶介……


俺を独りに
しないでよっ……


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