よ…余計な事、訊かなきゃ良かった。 しかし後悔先に立たず…。 「え〜つし」 う………。 「なんだよぉ、俺たち両思いじゃん ラブラブ?」 「だ…黙れ」 チッ。やっぱりバレてる。くそっ…。 とびと いわゆる かま しかし実は、飛鳥としては今のは、所謂鎌≠かけたのだ。 この近辺で自分と妹の他に、金髪の子供はいなかったはずだ。それで悦司が初恋の子 だと主張した妹が、実は悦司に会っていないとなれば…。当然、その初恋の相手というの は…。 (俺…だろ) でもそれは間違いで、「ハ?」とか言われたらどうしようっ と、内心ではドキドキしていた とびと のだが、否定しない悦司に、飛鳥は踊り狂いそうな喜びに胸を弾ませていた。 「そっ…、それより!」 とびと 飛鳥が何か言おうと口を開きかけたのを遮るようにして、悦司がわざとらしく大きな声を とびと つつ 出した。話題を変えようとしているのに飛鳥も気が付いたが、あまり突くのも可哀想なので、 あえて乗ってみた。 「ん?」 「お前、なんか俺に、俺のせいで自分がこんなふうになった、みたいな事言ったよな?アレ はどういう意味だよ」 とびと 悦司のその言葉に、飛鳥は大げさに溜め息をついてみせた。 「はぁー―、もう、ヤだなぁ〜。だって悦司が俺に「女の子と仲良くしろ」って言ったんじゃん」 「は?」 悦司は、大きな目をこぼれんばかりに見開いた。 き 「俺が『みんなにイジメられる』って言ったらさ、『ホントにみんな≠ネのか?』って訊かれ て―――」 「ん〜ん。女の子たちは優しい…」 「じゃあ、女の子と仲良くしろよ。お前をイジメるような男なんか無視すればいいんだ」 …ああ、言った。言いました。 なんてこった、確かに言ったよ。「女の子と仲良くしろ」ってね。 だってしょうがないだろ?目の前のその子も女の子だと思ってたんだから。 「ヒドイよなぁ〜、俺は悦司の言い付けを守って、ずっと女の子を大事にしてたのに、悦司っ てば自分だけすっかり忘れて、再会した俺に『変態』だの『タラシ』だの言うんだからっ」 「う…、そ、それは…悪かったよ。でも…、ホントにお前があの子なのか……?」 あの子が…、成長してコレ? 「悦司…、いくら俺が天使のように可愛かったからって…、マジで女の子だと思ってたん だ…?」 「………」 可愛…かったんだよな。本当に。 ふち 長いまつ毛に縁取られた形のいい大きな瞳、マシュマロのような白い頬、腰まで伸びた綺 麗なプラチナブロンド…。 どこを見て男だと気付けと? 「あの頃、悦司の方が背も高かったもんな〜。俺なんか小学校の2〜3年くらいから背ぇ伸 びだして、今180あるからな。女の子だと思ってたんなら、余計気付くわけないか…」 でかいと思ったら180cmもあったのか…。まったく羨ましい。 「悦司って今、何cm?」 「……160」 とびと 飛鳥がフッ…っと笑った。 「…何だ」 人の身長を聞いて、笑うとは失礼な。そりゃ、お前に比べりゃチビだよ。いや、お前と比べ なくてもチビだよ。わかってるよ。笑うな、クソッ。俺はお前と逆で、中学にあがってすぐに 身長が止まったんだっ悪いか! 「いや…、160って言うって事は、もしかして正確には159だったりして…と思って。てゆー か、俺も正確には179なんだけど、どうせそのうち伸びるだろうから、180って言ってるん だよね」 「………」 「え…悦司?」 このヤロウ……。 「159だったりして」だと?「どうせそのうち伸びる」だと!?もうこれから伸びる見込みの ない俺に向かって! 「俺…、やっぱり今のお前は嫌いだ」 とびと 図星を指されて怒りに震える悦司を前に、飛鳥は平謝りに謝るが、もう後の祭りだった。 |
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