結局、あれ以来片桐から何か行動を起こすことはなかった。

 一人になって目が覚めたのであろう。結婚間近の彼女と天秤にかければ、当然彼女の
                     いづる
方が大事に決まっているのだ。…出流が女であるならともかく。



「まったく、いい迷惑だよな」

 浮気相手になんかされてたまるか。

「…でも良かったな。もし片桐先生があれで諦めなかったら…って俺、出流をどうやって

守ろうか、本気で悩んだ…」

「えっ?」



 思わぬ慶介の言葉に驚き、まじまじと見つめてしまう。

「えっ…、いや、なんて言うか……」

 見つめられ、慶介もしどろもどろになりながら赤面していき、それを見た出流もまた、頬が

熱くなるのを感じた。



(な…なんか、良い雰囲気ってヤツじゃないのかっ?

 こっ告白かっ?ここで告白するべきなのかっ!?)

  言っちゃうか?



  いや、待て。こんな突然でいいのか?

  あっそうだ。どうせ慶介ニブいんだし、それとなく伝えるくらいなら

  大丈夫だよな。



「慶介、俺…――」

 ガチャ

「ただいまー」


「………」

「あれ?どしたの?二人とも赤い顔して」



「日高…、おかえり」

「おうっ、ただいま志村。

 あー!わかった。二人でエッチな話してたろ!それで顔が赤いんだな?お前らも猥談

なんかするんだな〜」



「日高……」

「ん?」

死にさらせ!!









「ご…ごめん、西原」
            ひわい
「お前の頭の中は、卑猥な事だらけか」

「そ…そういうわけじゃないんだけど」

 日高は、出流が自分の勘違いに対して怒っていると思い、謝っているのだが、当の出流

は、もう何に対して腹を立てているのかも自分で分からず、許し所も見失っていた。



「ま…まあ、もういいだろ。それより出流、ちょっと頼みがあるんだけど…」

「え、何?慶介」

 慶介の助け舟に、日高はホッと息をついた。


        いすみ
「実は、来週伊澄の誕生日なんだ。プレゼント買いに行くの付き合ってもらえないか?」

「え?椎名誕生日なの?じゃあ俺もなんか買う!」



  椎名へのプレゼントか〜、何が良いかな?



 いつも世話になりっぱなしの観もあるので、こういう機会にはちゃんと気持ちを返したい。





















「あ〜、なんか結局ありきたりな物になっちゃったけど、大丈夫かなあ〜?」

 色々と思い悩んではみたものの、これという物が思いつかず、結局日用品を買ってしまっ

た。出流は、プレゼントとしてこれで良かったのだろうかと思い悩んでいた。



「出流が選んだ物なら、何でも喜ぶよ」

「う〜ん、そうかな?」

 多分そうなのだろう。むしろ椎名が出流にもらって喜ばない物を思い浮かべる方が難し

い。



「すっかり、日が落ちるのも早くなったな。まだ6時前なのに真っ暗だ…」

「うん、もう夜みたいだね」



(これって、またもや良い雰囲気ってヤツ…?)



「ねえ、なんかいっぱい歩いて疲れたし、まだ門限まで時間あるから、ちょっとそこの公園で

休んでこうよ」

「ああ、そうだな」



  よしっ!




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