たけみ かつゆき
「この一番デカイのが竹御克征」

 デ…カっ
      とびと
 初めに飛鳥に紹介されたのは、椎名程ではないものの、ほとんど変わらない位の身長の

大男だった。細身の椎名と違い、ガッシリとしたその体格は、デカイの一言に尽きる。

「き…、君もバスケ部?」

「いえ、俺は空手部です」

 なるほど。


                   ともなり たくと
「で、こっちの一番ちっさいのが友成卓翔で」

 ほんとに小さいな、可愛い。…あれ?

「なんか、彼…、どこかで見たことあるような……」
 いづる
 出流が首を傾げて呟くと、卓翔は嬉しそうに笑った。
        のいわ
「はい!俺、野巌中で、西原先輩の後輩なんですっ」

「へえ……、そっか」



 後輩……。



 出流は、今まで後輩を可愛がった事など一度もなかったのだが、慶介への対抗心なども

あり、「よしよし」と卓翔の頭を撫ぜてやった。



「それから……」
 とびと
 飛鳥がゴホンと咳払いをし、黒髪の線の細い少年を片腕に引き寄せて続けた。
                    あさくら えつし
「これが俺のスイートハニー 浅倉悦司」

「「「は?」」」
                  とびと
 出流と椎名、そして何故か、飛鳥に抱き寄せられた少年の声が見事にハモった。



 てゆーか……、
   
 女タラシ≠カゃなかったっけ……?


        とびと                    む   ずね
 目の前では飛鳥が「誰がハニーだっ」と、悦司に向こう脛を蹴り上げられている。


            とたん  しゅうし が
 男子校に入った途端、宗旨変えかよっ!



「長生きするな……、彼」

 呆れ顔で呟いた出流に、椎名は
       せっそう
「あそこまで節操なしだとは思わなかった……」
  うなだ
 と項垂れた。


      とびと
 一方の飛鳥は、ハニー≠ノ蹴られながらも、嬉しそうに顔をニヤけさせている。

(悦司君…、どうやら逆効果だ。奴はMのようだぞっ)


                                       とびと
 出流は女タラシ≠カゃなくて人間タラシ≠セな。と、中津川飛鳥の情報を脳内で書き

換えた。





















「え?」

「ん?だから、土曜日に後輩とちょっと出掛けて来る…って」

 後輩……。

「昨日、屋上で会っただろ?七瀬と」



 やっぱり……。



 今週の土曜日は、珍しく慶介の部活が休みだと聞いていた。久しぶりに二人でゆっくり

過ごせると思っていたのに……。

「ふぅん……」
 そ   け
 素っ気無い返事を返す出流に、慶介が困ったように続けた。

「買い物に付き合ってほしいって頼まれたんだ。部で使う物とか…、結構な量になりそうだ

から」



 マネージャーは、彼一人ではない筈だ。たとえ他のマネージャーが先輩ばかりで頼みづら

かったとしても、一年生部員の中に知り合いは居るだろう。

 ……なぜ慶介なのか。



「あっそ、勝手にすれば?俺はもう寝る」
               ふとん  もぐ
 バフッと、背中を向けて布団に潜った出流に、慶介は一応

「……ああ、おやすみ」

 と声を掛けた。



 待ちに待った念願の二人部屋だというのに、この気まずさは何だろう。やり切れなさに

涙が出そうになるが、ここで泣いては慶介に気付かれてしまう。

 たかが後輩と買い物に出掛けると言っただけで泣かれては、慶介に面倒くさい奴だと
                         こら
思われてしまいそうで、グッと唇を噛んで堪えた。




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