ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その１０

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

一

ⅹ

　地図機能を使って迷いながらも久万野神社へたどり着くと、

麻里は小ぶりな鳥居をくぐり境内へ入った。

「まずはお参り、かしらね？」

　何事も挨拶が肝心だろう。

麻里はお手水の前に立ち、以前生徒から聞いた通りに手を清める。

こんなにきちんと手順に則ってしたことは、

黄梅市へ来るまでしたことがなかった。

「何しろ本当に神様の末裔がいる街なんだものねえ」

　みのりの横顔を思いだし、麻里は溜め息をつく。

あんなきれいな子がこの世に存在するとは思わなかった。

透明感のある白い肌といい、長い黒髪といい、

おとぎ話にでてくるお姫様そのものである。

「私もあれだけきれいで頭のいい人間に生まれたかったな」

　ドジや失敗ばかりの自分とはまったく別の、

幸せな人生を送れているに違いない。

そんな埒もないことを考えながらお参りを済ませた時、

ふと昨日上司の言ったことが脳裏をよぎった。

『彼女を解放することがすべての人間の幸せに通じる……』

　そうだ。彼女は決して幸せで恵まれた人生を

送っているわけではなかったんだ。

突然蘇った記憶に冷水を浴びせられたような気分に陥っていると、

境内の隅からふわりと柔らかな風が吹いてきた。

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