ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その３５

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

三

ⅹ

　自転車をこぐこと数分。

見あげた空には雲のほか数羽の鳥がいるのが見えるが、

どれを追いかければいいのかわからない。

だが、今は悩んでいる暇もないのが実情だ。

「それで、どの鳥を追いかければいいのかしら？」

　同じように空を仰ぎ見た主婦が声をかけてくる。

最初は先を走っていたのは自分のはずなのに、

いつの間にか追い越されしまっていた。

思った以上にこぐのが早い彼女を必死で追いかけつつ、

麻里は大声で応える。

「よくわかりませんけど、とにかく大きい鳥でしたから。

それを。はい。たぶん」

　根拠のないことは重々承知の上で告げると、主婦が頷いた。

　「それじゃあ、あなたが先導していって」

　なんて無情なことを言うのだろう。

もう少しこちらの心情を察してくれてもいいだろうに。

半ばやけくそで空をいく鳥を物色するが、

やはりどれが目当ての鳥なのか皆目見当がつかなかった。

「ええっと……。すみません。どういう鳥だったか実は覚えてません。

どれを追いかけたらいいと思います？」

　悔しいが鳥類にくわしくない自分には判別不可能だ。

内心で白旗をあげ律子へ尋ねると、律子が困ったように眉根を寄せる。

「え、そんなこと突然言われても……大きい鳥じゃない？　

実を捕られたとき迫力あったし。ほら、あんな遠くでも見えるくらいの」

遠くで飛んでいる鳥を指し示す律子の指先を目で追い、

麻里はなるほど、と首を縦に振った。

「あ、はい。そうですね。あれくらい……ってあれですよ！

奥さん！　実を咥えてます！　奥さん、すごい！」

「えっ、そうなの？　って、あなた目がいいわねー」

　感心したような声をあげる主婦に麻里は首をかしげる。

あんな遠くにまで目が届く主婦のほうが、ずっと目がいいように思うが。

とは思ったが口にはせず、麻里は当たり障りのない己の特徴だけを答える。

「あ、はい。小さいころから視力だけはよくて」

　口角をあげてみせると主婦を目元を和ませてきた。

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