ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その５１

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

四

ⅹⅰ

「ちょっと待った！！」

　律子は打ちひしがれていたことも忘れ、麻里を引き止める。

「あなたまたそれで落ちたらどうするの」

　まさか木から落ちたばかりで再挑戦しようなど、

律子は信じられない気持ちで麻里を見つめた。

しかし彼女は笑みを浮かべあっけらかんと口を開く。

「大丈夫です律子さん！　さっきちょっと学習しましたから！」

「いいえ、ダメよ。

あなたあの人がいなかったら確実に死んでいたのよ」

　律子は間髪入れずに彼女の意見に反対した。

今度は折れるつもりはない。ことは命に関わるのだ。

それが麻里にも伝わったのだろう。彼女は顔をくしゃりとしかめる。

「じゃああのどんぐりはどうするんですか！

取らないとだめなんです！　本当なんです！」

　律子は瞳を潤ませ睨んでくる麻里に慌てる。

「ちょ、泣かないでよ。あのどんぐりが取れればいいんでしょう？」

　柔らかい声を出すように心がけながら宥めると、

麻里は鼻をすすりながら頷いた。

「は、はい」

「じゃぁ、あの人に取ってきてもらえばいいのよ。

さっきの身のこなしから、

あなたよりは確実に運動神経いいはずだもの」

　律子が目線で麻里を助けた青年を指し示すと

彼女もつられるように、青年へ顔を向ける。

「え？　あの人に？」

　こちらに背を向けしゃがみこんでいる青年をちらちら見つめながら

訊いてくる麻里へ律子は頷いてみせた。

だが彼女は一瞬目を見開いたかと思うとすぐに眉間に皺を作る。

「なんかダメです！　あの人頼りないもの」

　品定めするかのように断言してきた彼女の言葉に

律子は声をあげて笑う。

「アハハハ。何言ってるの、あなたよりは大丈夫よ」

　彼女のことをよく知っているわけではないが、

木登りに関しては彼のほうが安心できると律子は確信を持っていた。

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