ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その５２

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

四

ⅹⅱ

（テレビでみたから木に登れるなんて言っちゃうような子より

彼のほうが信頼できるに決まってるわよね）

「そ、そんな……！」

　自分の言葉は思いのほか彼女を傷つけてしまったようだ。

うなだれる麻里に多少の罪悪感を感じながらも、

彼女のためだと律子は心を鬼にした。

「あなたどんぐり欲しいんでしょう？

だったら年長者の言うことを騙されたと思って聞いてみなさいよ」

　優しく諭しても彼女は眉間に皺を寄せたままだった。

（まぁ、初対面の相手に頼みごとをするのも

躊躇＜ちゅうちょ＞するわよね）

　渋る麻里の気持ちはわからないでもない。

頼みごとを断られる可能性だってあるのだ。

律子はそれならばと、いいことを思いついた。

「ちょっと耳貸して」

「は、はい？」

　首を傾げながらも素直に従う麻里へ

いつも自分が夫に使っている秘策を伝授する。

「いい？　上目づかいで首を傾げて言ってごらんなさい。

一発でお願い聞いてくれるわ」

「は、はあ……？　わ、わかりました……」

（ちゃんとわかったのかしら？）

　律子は曖昧な返事をする麻里の背中に活を入れた。

一つ前を読む　　　 GPの部屋に戻る　　　次を読む