ＧＰ２～麻里＆律子の場合～その８

Gold Plum

第二章

交錯

～麻里＆律子の場合～

一

ⅷ

「はい、小越です」

『起きてたか。めずらしいが感心なことだ』

　上司の高松の声が聞こえ麻里は慌てた。

（携帯の表示ちゃんと見ておくんだった……）

　悔いてみてももう遅い。

しかたなく麻里は小声で高松に断りを入れる。

「あ、あの、すみません。

ちょっと待っていていただけますでしょうか？」

『ああ、かまわないよ』

「ありがとうございます」

　多島が変な疑いを持つ前にここを立ち去ろう。

麻里は多島を振り返り携帯を耳から外した。

「ごめんなさい。なんか実家の祖父が体調を崩したらしくて。

すみませんが、今日は学校をお休みさせていただくと

お伝えしていただけないでしょうか？」

　眉をさげて告げると多島が気の毒そうな表情で頷いた。

「それは大変だ。いいですよ。お伝えしておきます。

お祖父さま、お大事になさってください」

「はい。ありがとうございます。それでは。

……あ、土、ありがとうございました！」

「お気をつけて」

　丁寧に一礼して踵を返す寸前、

多島の皺のよった頬が穏やかに綻んでいるのが見えた。

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