Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
一
IB
「先に傷つけたのはあんたでしょう」
聞き捨てならない言葉に涼介は目を剥く。
「そっちだよ。忘れないでほしいな」
腕を組んで睨みつけると、
みのりもこちらをぎっと睨み据えてきた。
「忘れてないわよ。あんたこそ忘れてるんじゃないわよ!」
「俺が? いつ?」
そんな記憶はまったくない。
だいたい捨て台詞を吐いて逃げていったのは、
みのりのほうではないか。
眉根を寄せてみのりへ尋ねると、
不思議そうな顔をした紅が首をかしげた。
「似たもの夫婦?」
「『夫婦』じゃない!」
涼介はおもいっきり否定する。
言うに事かいて「夫婦」とは。
いくら綺麗に成長しているからと言って、
こんなかわいげの欠片もない女の子を妻にするなどもっての他である。
沸騰しそうなほど熱くなる頬を誤魔化しながら叫んでいると、
みのりもなぜか顔を赤くし、しどろもどろで紅へ答えた。
「べ、紅、ななな何言ってるの。
こ、こいつとふ、夫婦なわけないでしょうが」
ぎこちないしぐさで紅を見やるみのりを尻目に、
碧が紅に手を置く。
「紅、それを言うなら似たもの同士だよ」
碧の一言でぽんと紅が手を打った。
(……に、似た者同士って……)
下手をすると「夫婦」という単語より恥ずかしい。
涼介はみるみる上昇してくる体温を気づかれないよう、
みのりたちから視線を逸らす。
熱くてたまらない身体を冷まそうと苦心していると、
ふいに拍手が聞こえてきた。
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