Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
一
IC
「さすが碧君。扱いづらい弟をこうも簡単に説得してしまうとは」
愉快げな声をあげる雅秋に、碧が答える。
「扱いづらい? 君と違ってとても素直な子ですよ涼介君は」
軽く肩を揺らしさらりと返答する碧の言葉に、
涼介は心を弾ませた。
「あ、ありがとうございます」
やっぱり碧さんは他の人間とは違う。
喜びのままに一礼すると、
背後の雅秋が大仰な溜め息をついてくる。
「人によるみたいだがね」
「仁徳の差というやつでしょうね」
兄の皮肉に対ししれっとした顔で応じる碧へ感動していると、
雅秋が軽く肩を揺らした。
「まあ、そういうことにしておこうか」
座椅子の背にもたれて告げる雅秋へ碧が小さく微笑む。
「ふふふ。さてお嬢様。
話もまとまったようですしそろそろお暇いたしましょうか」
「そ、そうね。そろそろお暇しましょう」
碧の提案にいまだほんのり頬を染めたままのみのりが首肯した。
「みのり様、愚弟のこと、くれぐれもよろしくお願いいたします」
雅秋が柔和な笑みとともにに一礼すると、
みのりが目を細めて雅秋を見つめる。
「……確約はできないけど、心にとめておくわ」
「ありがとうございます」
みのりの発言に雅秋が今一度深々と一礼した。
涼介はそんな雅秋の態度を前に小さく鼻を鳴らす。
「ごちそう様でした。お先に失礼するわ。文兎先生も」
言い置いたとたんに立ち上がり、みのりが障子を開けた。
そのまますたすたと歩き去ってしまうみのりを見て、
紅がぺこりとお辞儀しみのりの後へついていく。
「それじゃあ涼介君を僕たちも行こうか」
「はい、碧さん」
碧に微笑みかけられ涼介は頷いた。
(とにかく、今はついていくしかないよな)
納得しかねる部分は多分にあるが、今は様子を見たほうがいい。
内心で言い聞かせながら、
涼介はすばやく踵を返し部屋を後にする碧の後ろ姿を追った。
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