Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
三
E
「え! 本当ですか?」
窓から空を見上げるが何も見えない。
前からなら見えるかもしれないと前方へ視線をやれば、
運転手も前屈みになってフロントガラスから巨大なムカデを
探していた。しかしそんなものが目に入ることはなく。
みのりは涼介を睨みつける。
「いないわよ」
「あーそうだと思ったらただのゴミだったみたいだ。
あははははは」
「ゴミ? ゴミが空を飛んでたの?」
空を飛ぶムカデなど見たことがないから見てみたかったのに
ただのゴミだったとは。
なんて人騒がせな人なのだろう。
みのりは涼介へ三白眼を向ける。
「そ、そう!
やっぱり5月の風はすがすがしいけど強いなあ。ははは」
涼介が頬をひきつらせて笑う。
(あんなに慌てて、何かやましいことでもあるのかしら?)
みのりは明らかに怪しい涼介の表情を見逃すまいと、
彼の顔を凝視した。
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