Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




E




「え! 本当ですか?」


 窓から空を見上げるが何も見えない。

前からなら見えるかもしれないと前方へ視線をやれば、

運転手も前屈みになってフロントガラスから巨大なムカデを

探していた。しかしそんなものが目に入ることはなく。

みのりは涼介を睨みつける。


「いないわよ」

「あーそうだと思ったらただのゴミだったみたいだ。

あははははは」

「ゴミ? ゴミが空を飛んでたの?」


 空を飛ぶムカデなど見たことがないから見てみたかったのに

ただのゴミだったとは。

なんて人騒がせな人なのだろう。

みのりは涼介へ三白眼を向ける。


「そ、そう!

やっぱり5月の風はすがすがしいけど強いなあ。ははは」


 涼介が頬をひきつらせて笑う。


(あんなに慌てて、何かやましいことでもあるのかしら?)


 みのりは明らかに怪しい涼介の表情を見逃すまいと、

彼の顔を凝視した。










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