Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
三
IC
「だから撒くんだろう?」
当たり前のように告げてくる涼介にみのりは目を丸くする。
思っていたよりもちゃんと考えてくれていたのだろうか。
悪いほうへ決めつけ、睨んでいた自分が恥ずかしくなった。
「車から降りちゃって撒けるの?」
「線路沿いからさらに間に入った道は入り組んでるんだ。
そこに入っておろしてもらえば、あとは徒歩で何とでもなるよ」
目的地が近くだとわかり、
みのりは気まずさに逸らしていた顔を涼介へと戻す。
「そうなの?」
「大丈夫だ。少し運動させることにはなるけどね」
ミラー越しに向けられた涼介の笑みに、
みのりは顔を火照らせる。
(な、何よ。こんなときにそんな顔で笑うなんてズルいわ)
さっきまでの作られた愛想笑いではなく、
こちらを気遣うような柔らかい微笑みから逃げるように口を開いた。
「徒歩で行けるくらいの運動ならどうってことないわ」
「期待してるよ」
「私を誰だと思ってるのよ?」
素直に頷けばいいものの、
ついつい可愛くない言葉を言ってしまう自分に内心で肩を落とす。
これでは先ほど同様、
また険悪な雰囲気になってしまうではないか。
案の定、涼介の柔和な笑みが冷めた目つきに代わっていた。
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