Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




@




 トニーズの前に着くと、涼介が扉を開けて待っていた。


「どうぞ」

「……ありがとう」


 先に入れと手で示され、みのりはおずおずと会釈する。

てっきり、自分ひとりでさっさと入って行くのかと思っていたが

違っていたようだ。


(何よ、やろうと思えばできるんじゃない)


 末端とはいえ梅八家の一員なのだからできないほうが

おかしいのかもしれないが、

先ほどこちらに対してするつもりがないと言われたばかりである。

まさか舌の根もかわかぬうちに女性扱いされるとは思っても

みなかった。

だからなのか、普段され慣れているはずのこの手のことが

ひどく照れくさく感じる。


 みのりは涼介の顔を見ることができず

俯いたまま足早に歩を進めた。


「いや……」


 背後から近づく涼介の声遮るように、

待ち構えていた店員が笑顔のまま頭を下げてくる。


「いらっしゃいませ。トニーズにようこそ」


 大学生くらいだろうか。自分より少し年上に見える

こげ茶色の上下に白いリボンのシャツといったレトロな制服を

纏っている女性の声に、

みのりはトニーズに着いたことを今さらながら実感する。


(わあ、前に来たときと何も変わってないわ)


 壁紙、照明の明るさ、座席の向き、

何もかもが初めて来た時のままだ。

たった2、3年前のことなのだから

変わるはずもないのかもしれないが、

みのりにはそれが嬉しかった。










一つ前を読む   GPの部屋に戻る   次を読む





QLOOKアクセス解析