Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
四
C
口を小さなタコのようにするみのりを目にして、
涼介は一瞬息を止める。
「はいはい」
高鳴る胸を誤魔化すように頬杖をつき、笑みをこぼした。
「ちょっと待ってね。すぐ決めるから。私、こう見えて即断即決だから」
そんなことを言いつつメニューをいったりきたりするみのりへ、
涼介は頷いてみせる。
「うん、わかるよ」
お嬢様のことだ。
こんなところへ来る機会などめったにないに違いない。
ふんわりと温かくなる気持ちのまま涼介はみのりを見つめた。
「だから、好きなだけ頼んでいいって」
「うっ。も、もちろんよ。そっちこそ、もう決まったの?」
みのりの言葉に涼介は目をしばたたく。
「俺? 俺はコーヒーでいいかな」
メニューにある表示を目にしながらなんとなくで呟いた。
(なんせおかわり自由だしなあ)
金持ちのくせに貧乏くさいと友人の友永には言われるが、
それはちょっと違う。
これは自由の象徴なのだ。
(まあ、無理もないけど……)
友永たちのように「自分の稼いだ金でできることをする」
という自由がある人間には、一生わからないことだろうから。
一人苦笑しているとみのりが素っ頓狂な声をあげた。
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