Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




C




 口を小さなタコのようにするみのりを目にして、

涼介は一瞬息を止める。

「はいはい」

 高鳴る胸を誤魔化すように頬杖をつき、笑みをこぼした。

「ちょっと待ってね。すぐ決めるから。私、こう見えて即断即決だから」

そんなことを言いつつメニューをいったりきたりするみのりへ、

涼介は頷いてみせる。

「うん、わかるよ」

 お嬢様のことだ。

こんなところへ来る機会などめったにないに違いない。

ふんわりと温かくなる気持ちのまま涼介はみのりを見つめた。

「だから、好きなだけ頼んでいいって」

「うっ。も、もちろんよ。そっちこそ、もう決まったの?」

 みのりの言葉に涼介は目をしばたたく。

「俺? 俺はコーヒーでいいかな」

 メニューにある表示を目にしながらなんとなくで呟いた。

(なんせおかわり自由だしなあ)

 金持ちのくせに貧乏くさいと友人の友永には言われるが、

それはちょっと違う。

これは自由の象徴なのだ。

(まあ、無理もないけど……)

 友永たちのように「自分の稼いだ金でできることをする」

という自由がある人間には、一生わからないことだろうから。

 一人苦笑しているとみのりが素っ頓狂な声をあげた。










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