Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
一
E
「忘れてたわ」
雅秋のぼやきへみのりが冷静に応える。
「思い出していただけて光栄ですよ」
このままでは埒が明かない。
皮肉気に告げる雅秋に対し、涼介は先刻から気になっていることへ
水を向けることにした。
「そういえば、なんかいい匂いがするんだけど
この部屋香でも焚いてるんですか? 兄さん」
「いや、そんなことはしていないが……」
不思議そうにかぶりを振る雅秋の言葉へ、紅が小さく声をあげる。
「お嬢さまと同じくらいいい匂い」
真顔でこちらを見つめてくる少女に、涼介は動揺した。
みのりほどではないが、楚々とした印象のかわいらしい子である。
「紅、僕というものがいながら他の男なんて見るんじゃありません」
碧の言葉で我に返った涼介は、視線を軽く逸らして服の匂いを嗅いでみた。
だが、別段変った匂いはしない。
「いい匂い? 俺が?」
首をかしげているとみのりと目が合う。
「……ちょっとみのりさん、どうしてそんな変な目で見るかな?」
胡乱な目で見つめてくるみのりに文句を告げると、
みのりの瞳が小さく見開かれた。
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