Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




E




「忘れてたわ」

 雅秋のぼやきへみのりが冷静に応える。

「思い出していただけて光栄ですよ」

 このままでは埒が明かない。

皮肉気に告げる雅秋に対し、涼介は先刻から気になっていることへ

水を向けることにした。

「そういえば、なんかいい匂いがするんだけど

この部屋香でも焚いてるんですか? 兄さん」

「いや、そんなことはしていないが……」

 不思議そうにかぶりを振る雅秋の言葉へ、紅が小さく声をあげる。

  「お嬢さまと同じくらいいい匂い」

 真顔でこちらを見つめてくる少女に、涼介は動揺した。

みのりほどではないが、楚々とした印象のかわいらしい子である。

「紅、僕というものがいながら他の男なんて見るんじゃありません」

 碧の言葉で我に返った涼介は、視線を軽く逸らして服の匂いを嗅いでみた。

だが、別段変った匂いはしない。

「いい匂い? 俺が?」

 首をかしげているとみのりと目が合う。

「……ちょっとみのりさん、どうしてそんな変な目で見るかな?」

 胡乱な目で見つめてくるみのりに文句を告げると、

みのりの瞳が小さく見開かれた。










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