Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




IIA




「美味なるものはまだマロ?

わらわは美味なるものを早急に所望するマロ」


 雪姫が両手をバタバタと上下させる。

その姿は非常に可愛らしい。

だが、徐々に大きくなる雪姫の声にみのりはまずいと感じ、

彼女を黙らせるべくアイスへ手を伸ばそうとして思い留まった。


「ねぇ、そのアイスクリームもう溶けちゃってるけど

大丈夫かな?」


 いくらアイスを所望しているとはいえ

液体に近いアイスをあげてもいいものかと涼介を見つめれば、

彼は一瞬言葉を詰まらせる。


「さ、さあ? なら、どうする? もう一回頼むかい?」


 新たに注文すればちゃんとしたアイスをあげることができるが、

それには店員をこちらへ呼ばなくてはならない。

しかしそれはさすがにまずいだろう。

みのりは雪姫には聞こえないようにコソコソと涼介へ話しかけた。


「でもこの子、見られたらなんて説明するのよ」

「君が腹話術の練習してるとかなんとか言えばいいじゃないか」


 みのりは突拍子もないことを言い出す涼介に目を見張る。


「腹話術って。それじゃ、言い出しっぺのあんたがやりなさいよ」

「俺じゃあ声が合わないだろう!」

「美味なるものを所望するマロー!

ん? そういえばのみはどこマロ?」

「私だってこんな可愛い声出せないわよ!」

「のみー、のみはどこマロ?」


 放置に堪えきれなくなったのか

雪姫が突然テーブルの上をくるくる走り始めた。










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