Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
四
IIB
「ほ、ほら、なんか呼んでるよ。
「のみ」って「みのり」の「の」と「み」じゃないか」
「それだったら『のみ』じゃなくて『みの』でしょうが!」
「のみー、のみ、わらわはここマロー!」
訳の分からないことを言い出す涼介を諫めている間に、
雪姫の声がさらに大きくなる。
それと同時に彼女の声につられる形で
自分たちの声も勢いを増していった。
「俺が知るわけないだろう!
つか、とにかくここは君がどうにかしろよ!」
「どうにかってどうすればいいのよ!」
こちらへすべて丸投げしようとする涼介に苛立ちを覚える。
だが、ここで騒ぎを大きくするわけにはいかない。
みのりは冷静になれと自分に言い聞かせながら涼介と向き合った。
「っていうか、この店出たほうがいいんじゃない?」
「この子……じゃなくて、雪姫様はどうするんだよ」
涼介が大粒の涙を流しながら走り続けている雪姫へ
ちらりと視線を送る。
小さな身体のどこにそんな力があるのか、
雪姫の泣き声は衰えるどころか
益々増していっているような気がする。
「の゛み゛ー、の゛み゛ー、
わらわを捨てたマロかー、の゛み゛ー」
「そりゃ、もちろんつれていくわよ」
誰かを探しているのだろうか。
涙で前など見えないだろうに雪姫は顔を上げたままテーブルの上を
歩いている。みのりはそんな雪姫の必死さに胸が痛くなった。
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