Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




IIB




「ほ、ほら、なんか呼んでるよ。

「のみ」って「みのり」の「の」と「み」じゃないか」

「それだったら『のみ』じゃなくて『みの』でしょうが!」

「のみー、のみ、わらわはここマロー!」


 訳の分からないことを言い出す涼介を諫めている間に、

雪姫の声がさらに大きくなる。

それと同時に彼女の声につられる形で

自分たちの声も勢いを増していった。


「俺が知るわけないだろう!

つか、とにかくここは君がどうにかしろよ!」

「どうにかってどうすればいいのよ!」


 こちらへすべて丸投げしようとする涼介に苛立ちを覚える。

だが、ここで騒ぎを大きくするわけにはいかない。

みのりは冷静になれと自分に言い聞かせながら涼介と向き合った。


「っていうか、この店出たほうがいいんじゃない?」

「この子……じゃなくて、雪姫様はどうするんだよ」


 涼介が大粒の涙を流しながら走り続けている雪姫へ

ちらりと視線を送る。

小さな身体のどこにそんな力があるのか、

雪姫の泣き声は衰えるどころか

益々増していっているような気がする。


「の゛み゛ー、の゛み゛ー、

わらわを捨てたマロかー、の゛み゛ー」

「そりゃ、もちろんつれていくわよ」


 誰かを探しているのだろうか。

涙で前など見えないだろうに雪姫は顔を上げたままテーブルの上を

歩いている。みのりはそんな雪姫の必死さに胸が痛くなった。










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