Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
四
IIC
「の゛み゛ー」
「しかたない! 雪姫様、ごめん!」
涼介が声を枯らせ、
泣き続ける雪姫をパーカーのポケットに入れる。
突然のことに口を開け呆けていると、
彼は力強い眼差しをこちらへ向けてきた。
「出よう!」
「むぐぐ、の゛み゛ー」
「わ、わかったわ」
すぐさま席を立つ涼介に倣い、
みのりも伝票と脇に置いていた荷物を掴み立ち上がる。
身支度を終えると、
待っていましたとばかりに涼介が手に持っていた伝票を抜き取った。
「ポケットを押さえててくれるかな? これは俺が払う」
「いいわよ。押さえたら雪姫様がかわいそうじゃない。
あんたは先に外へ出てて」
「わかった。じゃあこれで払ってくれ。
みのりさんに払わせたとあったら梅畑の恥になる」
涼介はどうやっても自分こちらに支払わせるつもりはないらしい。
「あ、ありがとう」
年上としての矜持なのか、男としてのプライドなのか。
あるいはその両方なのか。
変なところで紳士的な姿を見せる涼介に驚きながらも、
みのりは押し付けられた1万円札を受け取った。
それでもまだ涼介は安心できなかったらしい。
出てきた店員へ、念を押すように「よろしく」と軽く手をあげ、
店を出て行った。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|