Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
六
A
「温泉、気持ちいい」
「紅までそんなこと言って」
みのりは、口数の少ない紅までもが乗り気なことに苦笑する。
「お嬢さま、一緒に入ろ? 温泉」
「紅ー、紅は僕と家族風……」
「あんたは黙ってなさい」
余計な事を言い出そうとする碧の腹部へ、
みのりは肘鉄を食らわせた。
涼介がそんなこちらに関わり合いたくないとでも言わんばかりに
視線を逸らす。
そして彼自身の手の上に正座している雪姫へ語りかけた。
「うん。気持ちのいいのはいいことだよ。ね、雪姫様?」
こちらの手の中にいた雪姫は、
車が動き出したとたん車内でちょこまかと駆け回り始めたのである。
腕を伝って肩まできたかと思えば、
肩から離れ背もたれのへりへ飛び移ったり。
そのへりの上を匍匐(ほふく)前進したままドア付近まで
進んでみたりと、それはもう危険を省みず、縦横無尽に移動した。
手や口を出して落ちても困ると思い何もできずに見ていたところを
涼介が捕獲してくれたのだ。
「温泉はいいマロー! 雪見風呂マロー」
「雪? 雪は降ってないかなー」
楽しそうに笑みを浮かべながら涼介が宿のほうへと進む。
気がつけば自分1人を残し、碧と紅も宿へ向かっていた。
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