Gold Plum





第二章


交錯


〜みのり&涼介の場合〜




G




「僕を置いてさっさと行ってしまうなんて、

お嬢様も薄情な人ですね。おや、どうしました?」


 主として指導した愛の鉄拳の傷が癒えたようだ。

碧が腹部をさすりながら不思議そうな顔で近づいてくる。

みのりは女将には聞こえないよう、

彼女から少し距離を置き碧へ詰め寄った。


「碧、あの女将さんってどういう人なのよ?」

「そうですねー。一言で言ったらミステリアスな人ですかね?」


 束の間の思案のあと紡ぎ出された言葉に、

みのりは顔をしかめる。

それでも最後まで話を聞けば納得のいく答えだと思えるかも

しれない。

みのりは、先を促すために黙ったまま続きを待つ。

しかし碧はこちらの思惑など省みることはなく。

早々に話を畳み、

いそいそと紅たちがいるほうへと移動してしまった。


「あ、もうつきましたね。

ではお嬢様たちは桜の間をお使いください」

「お荷物はここへ置かせていただきます。

今お茶をお入れしますから」


 廊下の土壁には桜の花と梅の花が向かい合わせで飾られている。

碧は桜の花が飾られている右側を指差した。

それを合図に女将が持っていた荷物を桜の間の入り口から

少し離れた梅の間の入り口へと置く。

みのりは、女将が碧から離れたのを見計らうと

彼の元へ指を突き付けた。










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