Gold Plum
第二章
交錯
〜みのり&涼介の場合〜
六
G
「僕を置いてさっさと行ってしまうなんて、
お嬢様も薄情な人ですね。おや、どうしました?」
主として指導した愛の鉄拳の傷が癒えたようだ。
碧が腹部をさすりながら不思議そうな顔で近づいてくる。
みのりは女将には聞こえないよう、
彼女から少し距離を置き碧へ詰め寄った。
「碧、あの女将さんってどういう人なのよ?」
「そうですねー。一言で言ったらミステリアスな人ですかね?」
束の間の思案のあと紡ぎ出された言葉に、
みのりは顔をしかめる。
それでも最後まで話を聞けば納得のいく答えだと思えるかも
しれない。
みのりは、先を促すために黙ったまま続きを待つ。
しかし碧はこちらの思惑など省みることはなく。
早々に話を畳み、
いそいそと紅たちがいるほうへと移動してしまった。
「あ、もうつきましたね。
ではお嬢様たちは桜の間をお使いください」
「お荷物はここへ置かせていただきます。
今お茶をお入れしますから」
廊下の土壁には桜の花と梅の花が向かい合わせで飾られている。
碧は桜の花が飾られている右側を指差した。
それを合図に女将が持っていた荷物を桜の間の入り口から
少し離れた梅の間の入り口へと置く。
みのりは、女将が碧から離れたのを見計らうと
彼の元へ指を突き付けた。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|