ＧＰ２～善郎＆律子の場合～その３８

Gold Plum

第二章

交錯

～善郎＆律子の場合～

三

ⅲ

「すみません。お邪魔します。あ、野木崎さんも一緒に」

「さあ、遠慮なさらずに。今主人を呼んできますから」

　にこりと微笑み家の中へ戻ろうとする女性を律子は慌てて止めた。

「え！　いえ、いいです」

　感心している場合ではなかった。

いくら獣人に好意的でも初対面の相手の家にあがる勇気はない。

律子は無作法にならないよう声をひそめながら、

飛田へ話しかけた。

「ちょっと飛田さん

自転車の弁償だけしてもらえれば十分ですから」

「そう言わず、とにかく一緒に来てください。

梅の実のこともありますし」

「そういえば、先ほどもそんなこと言ってましたよね。

あなたも黄金梅を実らせようとしてるんですか？」

「あ、はい。

正確には僕らじゃなくて次期当主さんがなんですけど……」

　なんのためらいもなく発せられた青年の言葉に、思考が止まる。

（次期当主って、ご本家の次期当主ってことよね？

　え、飛田さんってそんな雲の上のような存在の方に会えちゃう人なの？

　角出ちゃうのに？）

　あんぐりと口を開けたまま呆けているこちらをよそに、

女性が飛田へ話しかけていた。

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