Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




IIG




「とりあえず、詳しい話は私たちが宿泊している施設で

お聞かせください」

「くっ……うっ……そうだな!

喜びの再会はこれくらいにしておかないとだな!」


 こちらの声にすぐさま反応したのは山波だった。

照れくさそうに袖で涙を拭い、

何事もなかったかのよう大きな声で同意してくる。


「ちょっと麻里さん、そんなに泣かないで、ね」

「は、はい……うっ……」


 律子に慰められ、麻里も落ち着きを取り戻したようだ。

誘拐されこの中誰よりも疲れているはずの律子が

一番気を使っているように見えるのは目の錯覚だろうか。


(野木崎さんってすごいわ)


 みのりが内心で感嘆していると、

太一が山波へ話しかけていた。


「そうだね、グス。

カケルより先に会っちゃったけどグス。

許してくれるかな? グスグス」

「おうよ! ダチならわかってくれるはずだからな!」

「グス、うん。そうだよね」


 太一が涙で濡れた頬を、激しくこすりつけるように服で拭う。

太一が山波へ笑顔で応えると、

碧が手をパンと叩き注目を集めた。


「それではみなさん、行きましょうか」

「じゃあ、行こうか。ほら、太一君も」

「うん!」


 涼介の声に、太一が頷く。

そして涼介が太一へ手を差し出す。

みのりは無意識にそれに手を重ねようとし、我に返った。


(やだ、私ったら何をしようとしたのかしら?

あれは私じゃなくって太一君に向けられてるのに……)


 自分の勘違いに顔が熱くなる。

嬉しそうに涼介の手を握る太一を横目に、

みのりは持ちあげようとしていた手を反対の手で握りしめた。


「お嬢さま?」


 いつの間にか部屋の中には自分たちだけになっていたらしい。

みのりは不思議そうな顔で見てくる紅へ、

なんでもないの、と誤魔化し先に出て行った碧たちを追いかけた。










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