Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




III@




「……ええ、まあ……」


 苦虫を噛み潰したような顔で首肯する山波にみのりは苦笑する。


(やっぱり芽衣子さんを取られたみたいで嫌なのかしら?)


 男親は特にそうだと聞いたことがある。


(まあ、うちは違ったけど……)


 何せ父親である忠臣のほうがお見合いに乗り気なのだ。

みのりは家出する前に笑顔で薦められたときのことを思い出し、

深く息を吐いた。

そんなこちらの気持ちなど気づくこともなく碧が同意してくる。


「それはそうですよ、お嬢様。

人間が獣人たちの地区へ入ることは難しいですからね」

(碧のやつ、確信犯だわ!

山波さんに紅とのことを否定されたからってこんな時に

言い返さなくてもいいじゃない……)


 聞く人が聞けば嫌味だとわかるような碧の言葉に、

山波が怒り出してしまわないか。

みのりは戦々恐々としながら彼を窺う。

山波の頬が少しだけ引き攣っているように見えた。


「そうよね。

でもすでに氷ができてしまった場所は違うような気がするわね……。

そういえば先生と太一君は同じ車でここへ来たけど、

ここへ来る前に何かしていたんですか?」


 慌てて山波から視線を外す。

そして誤魔化すように麻里へ話を振った。










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