Gold Plum
第三章
救出
〜涼介&みのりの場合〜
六
III@
「……ええ、まあ……」
苦虫を噛み潰したような顔で首肯する山波にみのりは苦笑する。
(やっぱり芽衣子さんを取られたみたいで嫌なのかしら?)
男親は特にそうだと聞いたことがある。
(まあ、うちは違ったけど……)
何せ父親である忠臣のほうがお見合いに乗り気なのだ。
みのりは家出する前に笑顔で薦められたときのことを思い出し、
深く息を吐いた。
そんなこちらの気持ちなど気づくこともなく碧が同意してくる。
「それはそうですよ、お嬢様。
人間が獣人たちの地区へ入ることは難しいですからね」
(碧のやつ、確信犯だわ!
山波さんに紅とのことを否定されたからってこんな時に
言い返さなくてもいいじゃない……)
聞く人が聞けば嫌味だとわかるような碧の言葉に、
山波が怒り出してしまわないか。
みのりは戦々恐々としながら彼を窺う。
山波の頬が少しだけ引き攣っているように見えた。
「そうよね。
でもすでに氷ができてしまった場所は違うような気がするわね……。
そういえば先生と太一君は同じ車でここへ来たけど、
ここへ来る前に何かしていたんですか?」
慌てて山波から視線を外す。
そして誤魔化すように麻里へ話を振った。
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