Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




C




 主人を主人と思っていないのだろう。

いまだにからかいを含んだ笑みを浮かべている碧へ、

みのりは鋭い視線を浴びせる。

まったくこたえている様子はないが、これで説明が始まるに違いない。

その手の見極めを間違えたことがない側近だ。

みのりは腰へ手を当てたまま息を吐き出した。

しかし、碧が口を開く前に、そもそもの原因である雪姫が暴れ出す。


「氷ー! わらわは氷を所望するマロー!」


 机の上に大の字になり、両手両足をバタつかせている。

まるでおもちゃをねだる幼児のようだ。

これが本当に自分の祖先なのか、とみのりは首をかしげたくなった。

そもそも、なぜこんな手のひらに乗せられるほど小さいのか。

なぜアイスを垂らしただけで現れたのか。疑問は尽きない。

本人へ問いただそうにも、

始終『氷』を求めている状態で訊くことも叶わないでいた。


「雪姫。泣かないで、ね。……ちょっとあんたもどうにかしなさいよ」


 雪姫の頬を止めどなく流れ続けている涙に、

子供を苛めているような居たたまれなさを感じる。

みのりは雪姫に、聞こえないくらい小さな声で涼介へ命令した。










一つ前に戻る   GPの部屋に戻る   次を読む





QLOOKアクセス解析