Gold Plum
第三章
救出
〜涼介&みのりの場合〜
二
II
太一が携帯を手に部屋をでていくと、碧がみのりへ尋ねた。
「お嬢様。ずいぶんと大見目を切っておいでのようですがあてはあるのですか?」
からかいの一切感じられないごく真面目なその声音に、涼介は姿勢を正す。
視線を移しみのりを見ると、彼女は目をしばたたいた。
「へ? そ、そんなの……」
きまり悪げに視線を彷徨わせ、身体を寄せてくる。
(近い、近い)
ほわりと柔らかな体温に内心で焦るこちらをよそに、
みのりがの口パクで「何か言いなさいよ」と、口パクで涼介へ訴えてきた。
「俺は……ええっと……」
正直、案はない。翔の母親である野木崎とは一度会ったきりだが、
警戒心が強いだけでなく思考がいきなり明後日のほうへ向かう人だった気がする。
(おとなしく助けを待ってくれるタイプだったらいいんだけど)
そうでない可能性もゼロではないだけに、
どうしたらいいのか皆目見当がつかない。
涼介は答えに困って碧を見てしまう。
(こんなんじゃまた呆れられるよな……)
もう少ししっかりしたところを見せられるといいのにできそうにない。
気まずい思いを噛み締めていると、斜めにいた女将がおもむろに口を開いた。
「そういえば……」
「何、なにを知ってるの女将さん」
みのりが女将の言葉に一も二もなく飛びつく。
女将は柔和に微笑んだあと、頬へ手をあて答えた。
「『梅の里』という宿に、
ぐったりした女性を連れた男性客が4人ご宿泊されているらしいんですのよ」
女将の言葉に涼介は目を瞠る。
ずいぶん具体的な情報だ。いったいどこからそんな話を仕入れてきたのだろう。
疑問に思い声をかけようとすると、碧が女将へ視線を移した。
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