Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




E




「はあ? 何よそれ!」


 第2ラウンドの始まりかと身構えると、

飛田がビシッと音がなるくらい勢いよく直立する。

そして敬礼でもするかのように顔を斜め上の方へ向けたまま

声をあげた。


「は、ははははい! 帰ります! 行こう、芽衣子ちゃん!」

「え、今きたばっかりなのに帰ってしまうんですか?」


 みのりはなんのためらいもなく山波の言うとおりにしようとする

飛田へ話しかける。

だが、返答してきたのは飛田ではなく隣に立つ山波だった。


「いいんですよ。こいつら仕事があるんですから。なあ、芽衣子?」

「そ、それは確かに……。でも気になるんだけど……」


 芽衣子の気持ちはよくわかる。

自分だって同じ立場なら、

こんな中途半端で帰ることはできないだろう。

しかも仕事を残してきたらしい。

みのりは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

飛田のほうは、残してきた仕事が気になっているのだろう。

この場から早く去りたいと言うように

芽衣子を車へ移動しようと躍起になっていた。


「帰ります。帰ります。

律子さんが誘拐されちゃったのにびっくりして

ついてきちゃっただけなんで」

「お仕事の途中だったんですか? あの大丈夫ですか?」


 みのりは芽衣子を窺うように見る。


「仕事ですか? 大丈夫です。今から戻れば」


 芽衣子は腕時計を見て一瞬顔をしかめる。

だが、年下の自分に心配をかけないように

気を使ってくれたのだろう。

こちらを安心させるためか、明るく微笑んできた。










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