Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




IIB




 黒塗りの車の窓が開く。

中から碧と同じような黒いスーツ姿の男が身を乗り出すようにして

顔を出した。

みのりは男が持っている黒光りする物体を認識するや、目を見開く。


(……嘘、あれってマシンガンってやつじゃない?)


 まさかこちら側の生死は厭わないと言うことなのだろうか。


(お母様はもう私のことなんて必要がないってこと?)


 自宅へ連れ戻そうとしているだけだと思っていた。

みのりは愕然とする。

しかし、感傷に浸っている暇はないようだ。

黒服の男はなんのためらいもなくマシンガンを撃ってきた。


「キャー!」

「とうとう飛び道具まで出してきましたか」


 悲鳴をあげるこちらとは反対に碧は冷静にハンドルを操作する。

狙いを定められないようするためか、蛇行運転を繰り返していた。


「皆さん、安全のため体を折り曲げて頭部を守ってください」

「はい!」


 バックミラーへ視線を向けながら助言する碧の言葉に、涼介が頷く。

その隣で先ほどまではしゃいでいた太一が、

青褪めた顔で青年の服にしがみついていた。


「うわー。お兄ちゃん、怖いよー」

「太一君、こっちに体を寄せて丸くなってくれるかい?」

「う、うん」


 涼介が太一を宥めるように小刻みに震えている少年の肩を

抱え込む。


「大丈夫。絶対俺たちが守るから」


 力強い涼介の言葉に、太一の強張った顔が少し緩んだ。

太一のことは彼に任せておけば大丈夫だろう。

みのりはシートベルトをしっかりと握りしめながら、

外へ視線を向けた。

後ろには変わらずに追っ手の車がある。

心なしかさっきよりもさらに距離が縮まっているような気がした。

みのりは前方を見た。


 信号が赤になる直前。

対向車が曲がろうとするのを遮って直進する。

後方から、対向車と後ろの追手一台が衝突した音が

微かに聞こえてきた。










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