Gold Plum

第三章


救出


〜涼介の場合〜


一

�H

「ぼ、僕は何も知りません。森の中で会って自転車壊しちゃって。

その時に石みたいなものを見ただけなんです！」

　鹿の青年が声を荒らげ、涼介は視線を移す。

（石ってどういうことだ？　あの種からでてきたってことか？）

　いまいち理解ができず首を傾げていると、

みのりが頬に手をあてるのが見えた。

「石？　やっぱり黄金梅に関わってるってことかしら？」

　ぶつぶつと呟き何やら思案しているらしいみのりの言葉に、

涼介は内心で唸る。

落ちついた彼女の様子からしてもうすべての事情を知ってるのかも、

などと予想していたのだが、どうやらそうではないようだ。

（なら、やっぱりこの鹿の人に事情を訊くしかないよな……）

　涼介はぶつぶつと呟き続けているみのりを肘で突く。

「ほら、やっぱり知ってるんじゃないかい？」

　他の人間に聞こえないようささやくと、みのりが形のいい眉をあげた。

「なんのことよ？」

　不服げなその表情に一瞬むっとする。

（いやいや、大人げないぞ、俺）

　文句を言いたい気持ちをぐっと堪えて口を開きかけた時、

紺の軽ワゴンがものすごい勢いで入ってきてブレーキが辺り一面に響いた。