Gold Plum





第三章


救出


〜涼介&みのりの場合〜




I




(あー、どうして可愛くない言い方しかできないのかしら……)


 狸から危害を与えられないように必死で盾になってくれている相手へ

投げる言葉ではない。

かと言って今さら素直になるのもなんだか恥ずかしい。

それでもみのりは勇気を振り絞った。


「それより……その、ありがとう」


 意外と大きな涼介の背中へそっと手を置く。

周りの喧騒で聞こえていないことを祈りつつ告げた感謝の言葉は

きちんと青年に届けられてしまったらしい。

振り返ってきた涼介と目が合う。一気に体温が上昇する。

逃げるように俯くと同時に、

柔らかなそれでいてしっかりとした涼介の声が耳をくすぐった。


「大丈夫。君は俺が守るから」


 まさかそんな言葉をこの男から送られるとは思ってもみなかった。

みのりは羞恥心も忘れ顔をあげる。

しかし涼介の視線はすでにこちらにはなく、

目の前に立ちはだかる2人目の狸へと向けられていた。


(どんな顔で言ったんだろう)


 ちゃんと見ておけばよかった。

もう一度話しかければ振り返ってくれるだろうか。

手のひらに伝わる青年のぬくもりを感じながら

そんなことを考えていると、野太い雄叫びが木霊した。










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