Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




IIB




 翌朝、麻里は駅の改札で高松を待った。

約束の時間より10分早く来ていたのだが、時間になっても高松は

なかなか来なかった。

寝坊でもしたのだろうか。

いや、そんな人間ではない、はずだ。

(そもそも、高松室長のことよく知らないからなあ……)

 案外彼も方向音痴なのかもしれない。

とりあえず連絡を入れてみようか。

携帯を取り出した時、改札を颯爽と抜けてくる銀縁眼鏡の男性が目に映った。

「高松室長! こっちです!」

 慌てて手をあげ、一礼する。

「おはようございます!」

 薄手の紺のスーツに身を包んだ高松が爽やかな笑みで答えてきた。

「おはよう、麻里君。今日も元気だね」

 高松の言葉に麻里は瞳を瞬く。

「ありがとうございます。でも普通ですよ?」

 言われた意味がわからずきょとんとしていると、高松が笑い声をあげた。

「そうか。これが君の普通なのか。参ったな」

 笑いを堪えつつ眉根を寄せる高松を前に、麻里はさらに対応に窮した。

「何か問題でも?」

 そんな可笑しくなるようなことはしていないと思うのだが。

(室長の笑いのツボってどこ?)

 さっぱりわからない。

どう反応したものか、と途方に暮れていると、

笑いを治めた高松がかぶりを振る。

「いいや。なんでもないよ。

さあ、少し遅れてしまったし。待ち合わせの場所へ急ごう」

「あ、はい!」

 早足で歩き出す高松に倣い、麻里は駅の向かいに位置する藤丘へと急いだ










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