Gold Plum
第四章
疑惑
〜みのり&麻里の場合〜
三
F
「え? そんなことが以前にもあったんですか?」
興味津々で問いかけると、麗がうふふと含み笑いで告げる。
「そうなのよ。といっても言い伝えみたいなものだけどね」
軽く肩をすくめる麗夫人を前に麻里は好奇心を募らせる。
「私その話ぜひ聞きたいです!」
麗夫人に詰め寄ると、夫人は何も言わず不思議な笑みを浮かべた。
(一体どんな話なのかしら? やっぱり悲恋物?)
できるならハッピーエンドがいいが、昔話に悲劇はつきものだ。
(それに、現実自体が世知辛いものね……)
好きになってくれとは言わないが、もう少し仲良くしてくれてもいいのに。
溜め息を吐いて、ふと恥ずかしい思考をしていることに気づく。
一人頬を熱くしていると、前方で前方でみのりが首をかしげた。
「言い伝え? ……あ!
あの、その話とは別に氷に縁のある神社か氷に関係する
言い伝えとかってありますか?」
勢い込んで尋ねるみのりに、野伏間老人が顎に手をあてる。
「氷に縁のある神社だべか?」
「それだったらこの間山波さんと一緒に行った霜山蜂万神社がそうかしら?」
考え込む野伏間老人の問いに麗夫人が答えた。
聞いたことのない神社だ。
それはどこの神社だろう。
問いかけようと口を開きかけた時、横にいた高松が先に口を挟んだ。
「霜山蜂万神社?」
「ええ。雪姫様がいらっしゃった名残で社の砂利が今も氷のままなのよ」
氷の砂利。それはさぞかし幻想的で神聖な土地なのだろう。
麻里はまだ見ぬ神社を想像して心の底から感嘆した。
「素敵!」
手を組んで感想を述べると、背後から冷めた声がする。
「寒かったけどな……」
苦虫を噛み潰したような善郎の声音に興ざめした気分でいると、
野伏間老人がうんうんと頷いた。
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