Gold Plum
第四章
疑惑
〜みのり&麻里の場合〜
三
ID
「あ、いえ。私なんか……」
恥ずかしながら齢23になっても恋愛とは縁遠い。
中学、高校はそれなりに楽しかったが勉強を第一に生きてきていたし、
大学に入っても色恋よりも研究室に入り浸るほうが多かった。
(まあ、だからといって特に研究したい対象があったわけでもないんだけど)
学び舎は学問をするところ、という固定観念があったせいかもしれない。
サークル活動やゼミなどで合宿やキャンプなどを楽しみはしたが、
誰とも特別な関係にはならなかった。
もちろん、親しい友人はできたけれど。
(恋愛って何? って感じで生きてきたからなあ……)
そういった話に対するあこがれは強いが、
だからと言って自分がその主人公になる日はまだまだ先のような気がする。
視線を下向けて考え込んでいると、斜めでみのりが声をあげた。
「それでどうなったんですか?」
話を促してくるみのりに、麗夫人が答える。
「もちろん二人は生涯添い遂げて、めでたしめでたしよ。
今では満という、ちょっと立派とは言い難い子孫もいるしね」
目配せしてくる麗夫人に対し、麻里は曖昧に微笑む。
立派かどうかは知らないが、自分にとっては命の恩人だ。
(でも、とりあえず昔話がハッピーエンドでよかったわ)
胸に手をあて吐息しているとと、朔太郎氏が肩を落とした。
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