Gold Plum





第四章


疑惑


〜みのり&麻里の場合〜




H




「ああ、山波さん。良かった。ご無事なようですね」


 碧のホッとしたような声に自分の想像が杞憂だとわかり、

みのりは胸をなでおろした。

山波の声は聞こえてこないが、彼のことだ。

きっと電話の向こうで何度も頭をさげているに違いない。

顔は怖面なのに、

ずいぶんと腰の低い人だったから間違いないだろう。


「みのり様も無理をなさる方ですが、

山波さんも負けず劣らずですよ。

相手はプロの方なのですからね、

手を出そうなんておやめくださいね」


 老体の身でありながら我先にと立ち向かおうと、

ドライバーを握り締めた山波を思い出し苦笑する。


(本当、山波さんってば無鉄砲よね。

でもなんで彼を諌めるために私の名前を出すのよ!)


 耳をそばだて碧たちの会話を聞いていると

わかっての嫌味なのだろうか。

碧の目線はこちらを向いていないにも関わらず、

説教を受けている気分になり顔をしかめた。


(世間話なんていいから早く本題に入りなさいよね!)


 くどくどと小言を言う碧に、

山波も嫌気がさしているに違いない。

電話の向こう側にいる山波へ心の中で合掌を送った。










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