Gold Plum
第四章
疑惑
〜みのり&麻里の場合〜
一
H
「ああ、山波さん。良かった。ご無事なようですね」
碧のホッとしたような声に自分の想像が杞憂だとわかり、
みのりは胸をなでおろした。
山波の声は聞こえてこないが、彼のことだ。
きっと電話の向こうで何度も頭をさげているに違いない。
顔は怖面なのに、
ずいぶんと腰の低い人だったから間違いないだろう。
「みのり様も無理をなさる方ですが、
山波さんも負けず劣らずですよ。
相手はプロの方なのですからね、
手を出そうなんておやめくださいね」
老体の身でありながら我先にと立ち向かおうと、
ドライバーを握り締めた山波を思い出し苦笑する。
(本当、山波さんってば無鉄砲よね。
でもなんで彼を諌めるために私の名前を出すのよ!)
耳をそばだて碧たちの会話を聞いていると
わかっての嫌味なのだろうか。
碧の目線はこちらを向いていないにも関わらず、
説教を受けている気分になり顔をしかめた。
(世間話なんていいから早く本題に入りなさいよね!)
くどくどと小言を言う碧に、
山波も嫌気がさしているに違いない。
電話の向こう側にいる山波へ心の中で合掌を送った。
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