Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


五


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「え？　ダメかい？」


　首を振った自分の行動を見て否定されたと思ったのかもしれない。

困惑気味に眉を下げる忠信と目が合う。しかし一瞬の沈黙のあと、

驚愕したまま固まっていた雅仲が慌てた様子で口を開いた。


「いいえ。私も好きですから。

でもどちらかというと梅酒派かもしれないですね」


　雅仲が取り繕うように話す中、涼介のほうはまだ呆けたままだ。

それほど忠信の発言は突拍子もないことだったのだろうか。


（梅干しが好きなのって変なことなのかな？　あんなに美味しいのに）


　紫蘇で赤く染まった梅を想像し、口の中に唾液が広がる。


（あー想像したら梅干し食べたくなっちゃった）


　唾を飲み込みながらそんなことを考えていると、

雅仲がコップを呷るような仕草を見せた。


「どうです？　今夜冴島先生ともども一杯」

「いいですね。梅酒も僕の大好物なんですよ」


　さっきまでの悲しそうな顔が一変し、

忠信の顔に笑みが浮かんでいる。

もしかしたら梅干しよりも梅酒のほうが好きなのかもしれない。