Gold Plum

第四章


疑惑


〜涼介＆太一の場合〜


六


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「ちょっと見てください。これ、よく見ると鍵穴がないんですよ」


　涼介が錠前を見せようと動かす。

そのたびに扉がガタガタと音を立てていた。


「本当だー」


　青年の手元を覗き込んでいると、律子の困惑した声が聞こえてくる。


「え、つまり、それってどういうことなのよ？」

「何かで切る、とか？　先生そんなことおっしゃってませんでした

よね。じゃあ、叩く、とか？　押す、とか？」


　涼介が口にしながら錠前をねじろうとしてみたり、

引っぱったりする。しかし、扉が揺れるだけで鍵が開くことは

なかった。それでも諦めきれないのだろう。

太一はためつすがめつ錠前を眺める涼介の横で腕を組み、

先生から訊いた話を思い出していた。


「うーん。先生が言ってたのは蜘蛛さんが隅っこに住んで、

八方向から蜘蛛の糸で繭を作ったってことだからー………うーん」

「てことは、繭を作らないと解除されないってことなんじゃない？」


　律子の言葉に涼介の手が止まる。


「繭を作らないと解除されない……」


　同じ言葉を小さな声で繰り返す。

俯き加減で眉間に皺を寄せ思案していた涼介がハッと顔を上げた。