Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
四
II
「川の水が」
欄干から身を乗り出して渦を見つめたまま呟く紅の声に、
みのりはホッと胸をなで下ろした。
(良かった。今の見られてなかったみたい)
「おやおや」
碧のからかいを含んだような声にびくりと肩を竦める。
おそるおそる近くにいるはずの彼の顔色を窺う。
だが、側近の視線は紅と同じ方向を向いていた。
(なんだ、私のことを見ていたんじゃなかったのね)
変な汗をかいてしまったではないか。八つ当たり気味に紅の
背後を陣取っている碧を睨みつけ、ハッとする。
(え、待って紅が涼介と両想いってことは碧も失恋したってこと
じゃない?)
サーッと血の気の下がっていくのをみのりは感じた。
紅を運命の相手だと言い続けている男が、この事実を知ったときに
どう出るか。まったく想像がつかなかった。
(下手したら血の雨が降るんじゃ……
黄金梅を無くすって願いじゃなくて、涼介と紅の仲を取り持つって
願いのほうがいいのかしら)
みのりは腕を組み、悶々と考え込む。
眉間に皺を寄せ呻いていると、太一の楽しげな声が聞こえてきた。
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