Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





II




「川の水が」


 欄干から身を乗り出して渦を見つめたまま呟く紅の声に、

みのりはホッと胸をなで下ろした。


(良かった。今の見られてなかったみたい)

「おやおや」


 碧のからかいを含んだような声にびくりと肩を竦める。

おそるおそる近くにいるはずの彼の顔色を窺う。

だが、側近の視線は紅と同じ方向を向いていた。


(なんだ、私のことを見ていたんじゃなかったのね)


 変な汗をかいてしまったではないか。八つ当たり気味に紅の

背後を陣取っている碧を睨みつけ、ハッとする。


(え、待って紅が涼介と両想いってことは碧も失恋したってこと

じゃない?)


 サーッと血の気の下がっていくのをみのりは感じた。

紅を運命の相手だと言い続けている男が、この事実を知ったときに

どう出るか。まったく想像がつかなかった。


(下手したら血の雨が降るんじゃ……

黄金梅を無くすって願いじゃなくて、涼介と紅の仲を取り持つって

願いのほうがいいのかしら)


 みのりは腕を組み、悶々と考え込む。

眉間に皺を寄せ呻いていると、太一の楽しげな声が聞こえてきた。










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