Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





II@




「すっごい!」


 橋の両側から渦が徐々に盛り上がってくる。それを見て、太一が

両手をあげて愉しげに笑っていた。


「水が上がってくるよ!」


 律子が欄干へ近づかせないよう太一の前に立ちはだかる。徐々に

せり上がってくる円錐型の水柱に律子が誰に言うでもなく

口を開いた。


「ねえ、ここにいたら危ないんじゃない?」


 しかし彼女の言葉は涼介の声によって遮られてしまった。


「この水でかき氷を作れってことですか? 雪姫」

「そうマロ!」


 雪姫が満足気に微笑み、身体全体を使って頷く。それを見て

納得したのか、涼介が腕を掴んできた。


「とりあえず固まるまで反対側へ寄ろう。みのりさん、こっちへ」

「え、ちょっと、涼介、紅が見てるわよ」


 せっかく紅に気づかれないように離れたというのに、

どういうつもりなのだろうか。みのりは火照る頬を誤魔化すように

ぶんぶんと腕を振った。しかし、その態度が涼介には

気に食わなかったみたいだ。目くじらを立てて怒鳴ってきた。


「そんなこと言ってる場合じゃないだろう!」


 頭ごなしに言ってくる涼介にみのりは腹を立てる。

わなわなと震える手をギュッと握りしめ、キッと睨みつけた。










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