Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
四
II@
「すっごい!」
橋の両側から渦が徐々に盛り上がってくる。それを見て、太一が
両手をあげて愉しげに笑っていた。
「水が上がってくるよ!」
律子が欄干へ近づかせないよう太一の前に立ちはだかる。徐々に
せり上がってくる円錐型の水柱に律子が誰に言うでもなく
口を開いた。
「ねえ、ここにいたら危ないんじゃない?」
しかし彼女の言葉は涼介の声によって遮られてしまった。
「この水でかき氷を作れってことですか? 雪姫」
「そうマロ!」
雪姫が満足気に微笑み、身体全体を使って頷く。それを見て
納得したのか、涼介が腕を掴んできた。
「とりあえず固まるまで反対側へ寄ろう。みのりさん、こっちへ」
「え、ちょっと、涼介、紅が見てるわよ」
せっかく紅に気づかれないように離れたというのに、
どういうつもりなのだろうか。みのりは火照る頬を誤魔化すように
ぶんぶんと腕を振った。しかし、その態度が涼介には
気に食わなかったみたいだ。目くじらを立てて怒鳴ってきた。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう!」
頭ごなしに言ってくる涼介にみのりは腹を立てる。
わなわなと震える手をギュッと握りしめ、キッと睨みつけた。
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