Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





IIB




(守ってくれなんて言ってないのに何よ。

だいたい好きな子にあんな顔させるんじゃないわよ!)


 みのりは、鼻息を荒くしてこちらを見ている涼介を責め立てた。


「拗ねるって何よ! 拗ねてるのはあんたのほうでしょう!」

「な! 拗ねてて悪かったな!

いいから君はおとなしくこっちに来るんだ!」


 口では埒が明かないと思ったのだろう。

強引にぐいっと引き寄せられる。たたらを踏みながらも必死で

抵抗していると、どこか呆れ返った口調の澄んだ声が聞こえてきた。


「主ら、何を言い合っているのだ?」


 みのりは声のしたほうへ顔を向け、息を飲む。

先ほどまで手のひらに乗るくらい小さなかった雪姫の視線が同じ

高さにあった。髪型も服装も何一つ変わらず、大きさだけが

変わっている。まるでそれは姿見に映った自分を見ている

ようだった。


「雪姫!」

「綺麗な人ー」

「誰?」


 涼介のあとに太一、そして律子が目の前に立つ人物の感想を漏らす。

それを頭の隅でぼんやりと聞きながら、みのりは彼女の名前を呟いた。


「雪姫、様……」

「みのりさんに似てる?」


 麻里の感嘆の声に、野木崎が声を裏返させた。


「へ? 雪姫様? え、さっきまで小さかったあの雪姫様?」

「しょ、初代様!」

「お嬢さま」

「おや、成長なされたんですねー」


 山波と紅が背を丸め、片膝を立ててかしずく。その横で碧が

飄々とした調子で雪姫を下から上へと観察するように眺めていた。










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