Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
五
IIA
「のみー!」
先ほどまで大きくなっていた雪姫がポンッと音を立てるかのように
小さくなり、着物姿の女性の胸元へ飛び込む。
「あ、戻っちゃった」
「わっ、雪姫様が小さくなっちゃった」
「む……」
麻里と太一の驚いた声のあとに山波の息を飲むような声が続いた。
そんなこちらの動揺に気づきもしていないのだろう。嬉しそうに話す
雪姫の言葉へ、のみは楽しげに相槌を打っている。
みのりは今起きていることが信じられず、マジマジと彼女らを
見つめた。
「本当にいたんだ。梅田のみ」
伝承の中だけの人だと思っていた。古文書やその他の文献では、
梅田の分家筋に当たる女性が『梅田のみ』という名を世襲し続けて
いると書かれていた。しかし、その存在が公にされたことは
一度としてない。それがまさか本当に存在していたなど、思いも
しなかった。
「俺全然知らなかったけど……」
ぽつりと漏らされた涼介の言葉に、
みのりは視線をのみたちへ向けたまま頷いた。
「あなたが……」
「お姉さま?」
珍しく碧もこの状況に度肝を抜かれたのかもしれない。梅田家の
本家である彼も知らなかったに違いない。押し黙る碧の近くで
梅田の名前に反応した紅が首をかしげていた。
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