Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
六
@
「雪姫様、皆様が呆気にとられていますよ。きちんとしてください」
水色の着物に身を包んだ女性が手のひらに雪姫を乗せる。
「うむ。そなたら、これがのみマロ」
突如現れた梅田のみという黒髪おかっぱ姿をした女性のことを、
雪姫が雑に紹介してきた。
紅く小さな唇に小柄な体躯をした彼女が、黒目を細め会釈してくる。
涼介は姿勢を正し頭を垂れつつ、のみをそっと観察した。
(梅田のみって言ったら、あの文書にでてきてた太郎様の妹様だろう?)
だが、のみが現在に生きているはずがない。
あれはもう二百年以上昔の話なのだから。
(じゃあ、この人はなんなんだ?)
見た目からすると自分とほとんど変わらない年齢のように感じる。
(こけしのコスプレ……なわけないし)
そもそも雪姫は意味のない冗談を言うタイプではないはずだ。
(わかんなくなってきた……)
痛むこめかみを押さえていると、太一が歓喜の声をあげた。
「雪姫様がずっと言ってた人ってこの人だったんだー」
「そうか。そういえばよく呼んでたよね」
太一の指摘に涼介は手を打つ。
そう言えば、事あるごとに「のみ、のみ」と騒いでいたことを思いだした。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|