Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
七
B
(獣人って言葉に飛田さんのことを思い出して
頭に血が昇ちゃったんだわきっと)
それだけ娘を取られたくないということなのだろう。現に山波は
獣人の三長老とは親しげに話をしていた。口で言うほど獣人たちを
嫌悪していないと考えられる。
(山波さんって素直な人って感じじゃないものね)
みのりが脳裏でそんな予測を立てていると、涼介と並んで
歩いている太一の陽気な笑い声が聞こえてくる。
「ピクニックみたいで楽しいね、お兄ちゃん」
「そうだね。がんばろうね」
太一と涼介の朗らかな会話に肩の力が抜けた。
(後ろの二人だけは呑気なものね)
みのりは野木崎と山波の不満が爆発する前に、のみへ声をかける
ことにした。
「あとどれくらいなんですか?」
「そうですね。そろそろ折り返し地点くらいかと……」
ちらりと顔を見せてくるのみに涼介が反応した。
「なんだかんだもう真ん中辺なのか」
涼介の言葉にみのりは頭を悩ませる。疲れを感じていない者に
とっては“もう”と言えるだろうが、疲弊している野木崎たちに
とっては“まだ”と言えるだろう。
(なんて言ったら野木崎さんたちのやる気が出てくるかしら……)
つまずかないよう下を見ながらそんなことを考えていると、
頭上から雪姫の声が聞こえてきた。
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