Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





B




(獣人って言葉に飛田さんのことを思い出して

頭に血が昇ちゃったんだわきっと)


 それだけ娘を取られたくないということなのだろう。現に山波は

獣人の三長老とは親しげに話をしていた。口で言うほど獣人たちを

嫌悪していないと考えられる。


(山波さんって素直な人って感じじゃないものね)


 みのりが脳裏でそんな予測を立てていると、涼介と並んで

歩いている太一の陽気な笑い声が聞こえてくる。


「ピクニックみたいで楽しいね、お兄ちゃん」

「そうだね。がんばろうね」


 太一と涼介の朗らかな会話に肩の力が抜けた。


(後ろの二人だけは呑気なものね)


 みのりは野木崎と山波の不満が爆発する前に、のみへ声をかける

ことにした。


「あとどれくらいなんですか?」

「そうですね。そろそろ折り返し地点くらいかと……」


 ちらりと顔を見せてくるのみに涼介が反応した。


「なんだかんだもう真ん中辺なのか」


 涼介の言葉にみのりは頭を悩ませる。疲れを感じていない者に

とっては“もう”と言えるだろうが、疲弊している野木崎たちに

とっては“まだ”と言えるだろう。


(なんて言ったら野木崎さんたちのやる気が出てくるかしら……)


 つまずかないよう下を見ながらそんなことを考えていると、

頭上から雪姫の声が聞こえてきた。










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