Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
八
A
「すごいね、おじちゃん! 梅の森だね!」
歩きながらクルクルと回り出す太一に、山波が自慢気にふんぞり
返る。
「当たり前だ。ここは黄金梅の里なんだからな!」
一面梅の木しかないこの場所はまさしく太一や山波の言う通り
“梅の森”であり“黄金梅の里”だった。葉に隠れているたわわに
実った青梅を何気なく視界に入れると、麻里が感心したように呟く。
「梅の木ってそんなに高くないんですね」
「それは手入れしてるからじゃないかな?」
麻里はあまり梅の木について詳しくないのかもしれない。
黄梅の人間ならば梅の木の高さなど見慣れているはずだ。
太一ですら梅の木の多さに驚いてはいるが、見た目には何も
反応していない。涼介が当たり障りのないように言葉を返している。
みのりはその後へ続いた。
「手入れも梅宮の仕事の1つなんですよ」
何せ、“桜切るバカ、梅切らぬバカ”ということわざがあるくらいだ。
剪定をせずに伸ばした枝は花つきが悪くなるため、手入れはとても
重要な仕事なのだ。
(都には梅を植える人なんていないのかもしれないわね)
足を止めずに麻里へ顔を向けると、彼女が感嘆のため息とともに
近づいてきた。
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