Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





A




「すごいね、おじちゃん! 梅の森だね!」


 歩きながらクルクルと回り出す太一に、山波が自慢気にふんぞり

返る。


「当たり前だ。ここは黄金梅の里なんだからな!」


 一面梅の木しかないこの場所はまさしく太一や山波の言う通り

“梅の森”であり“黄金梅の里”だった。葉に隠れているたわわに

実った青梅を何気なく視界に入れると、麻里が感心したように呟く。


「梅の木ってそんなに高くないんですね」

「それは手入れしてるからじゃないかな?」


 麻里はあまり梅の木について詳しくないのかもしれない。

黄梅の人間ならば梅の木の高さなど見慣れているはずだ。

太一ですら梅の木の多さに驚いてはいるが、見た目には何も

反応していない。涼介が当たり障りのないように言葉を返している。

みのりはその後へ続いた。


「手入れも梅宮の仕事の1つなんですよ」


 何せ、“桜切るバカ、梅切らぬバカ”ということわざがあるくらいだ。

剪定をせずに伸ばした枝は花つきが悪くなるため、手入れはとても

重要な仕事なのだ。


(都には梅を植える人なんていないのかもしれないわね)


 足を止めずに麻里へ顔を向けると、彼女が感嘆のため息とともに

近づいてきた。










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