Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





II@




(きっとお母様は雪姫のように、

見ている者を魅了する舞を期待していたんだわ)


 嫌々やっていた自分が舞ったところで、人を惹きつけるような

舞ができるはずもない。みのりが自嘲気味に苦笑いを浮かべていると、

太一がのみの持つ銚子をじっと眺めていた。


「さっき雪姫様が躍ったからその中に飲み物が入ったの?」

「うん。そうみたいだね」

「ええ、そうですよ」


 太一がへぇー、と、涼介とのみの言葉に感心している。雪姫が

誇らしげに頷いていた。その間に、太一の盃には果汁が注がれていた。

感嘆のため息を漏らす少年を横目に、のみが山波の前へ移動する。

すでに前へ出していた盃の中へ果汁を注ぐと、山波が静かに頭を

下げた。


「どうも……」

(機嫌は直っていないみたいね……)


 みのりはぶすっとした表情の山波を見て、肩を竦めた。

雪姫のことをあれだけ敬っている彼が、彼女の舞を見てにこりとも

笑っていない。


(これで本当に大丈夫なのかしら)


 最後の試練だというのに、なんとも言えない不安がよぎる。

みのりは救いを求めるように涼介を見た。しかし彼はこちらの視線に

気づくことなく、隣に立つ少年と楽しそうに話していた。










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