Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
九
A
「え?! わ、私も行きます!」
「おじちゃん! お兄ちゃんぼくも」
「えー急になんなのよー! 逃げ出すなんて卑怯よ山波さーん」
どうやら小越や野木崎、
果ては太一までついてきてしまっているようだ。
(野木崎さん! せめて太一君をだけでも押さえておいてくれよ!)
彼女が進んで自分たちについてきているはずがない。
どうにかして、太一の安全を確保してくれるといいのだが。
(戻ってみんなを説得するか?)
だが、そんなことをしている間に山波を取り逃しては意味がない。
(ここまでみんなそれなりに頑張ってきたんだ)
特にみのりは自分の運命に抗おうと必死に努力してきたのだから。
その思いを無駄にするわけにはいかない。
「山波さん!」
必死に呼びかける。
だが、山波は振り向きもせず、一心に坂を駈け上り始めてしまう。
(ちくしょう! なんて分からず屋なんだ!)
臍を噛んでいると、ふいに見覚えのある黒塗りの車が山波の前で停車した。
一つ前を読む GPの部屋に戻る 次を読む
|