Gold Plum





第五章


自覚


〜みのり&涼介の場合〜





C




「あれは……」


 いち早く隣へやって来た碧が車を見るなり目を細める。


「……雅秋兄の車です」


 ためらいながら答えると、みのりも愕然とした声音で呟いた。


「文兎先生がなんで……」

「市長の腰巾着」


 紅の言葉が心に刺さる。

 確かにみのりと再会したあの時も後方に控えていたのは、

秘書の吉田ではなく文兎だった。


(裏があるとは思ってたけどいったい何をしようとしてんだよ、兄さん!)


 唇を噛み締めていると、

追いついた太一が道路の前できょろきょろと辺りを見回す。


「あれ? おじちゃんどこに行っちゃったの?」


 泣きそうなのを堪えながら山波を探す姿が痛々しい。

 どうやって慰めたものかと考えていると、横で碧が顎に手をあてた。


「やはりこうきましたか……」


 ある程度予測していたのだろう。

自分があの時もっと断固として反対していれば、

こんなことにはならなかったかもしれない。


(そうだ。俺がなんとかしなくちゃ)


 決意して、碧を見る。


「藤端へ……家へ戻ります」


 これ以上みのりたちに迷惑をかけるわけにはいかない。

坂を下りようとしていると、遅れてやって来た小越が目を瞬かせる。


「何がどうなってるんですか?」


 そのさらに後ろでは、野木崎が苦しそうに肩で息をしていた。


「ぜーはーぜーはー、だからみんななんでそんなに走るのが早いのよ」


 話すのもやっとの状況できっちり非難してくる。


すみません、と内心で頭を下げつつ横をすり抜けると、

みのりが駆け寄ってきた。


「私も行くわ!」


 聞き捨てならないことを告げられ、涼介は目を瞠る。

みのりを守るために行くというのに、

彼女が敵陣に踏み込むなんてあってはならないことだ。

涼介は立ち止まり、勢いよく振り返る。


「いや、みのりさん。君は……」


 説得しようとみのりの腕を掴もうとした時、

場違いなほど明るい声が聞こえてきた。










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