Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
九
C
「あれは……」
いち早く隣へやって来た碧が車を見るなり目を細める。
「……雅秋兄の車です」
ためらいながら答えると、みのりも愕然とした声音で呟いた。
「文兎先生がなんで……」
「市長の腰巾着」
紅の言葉が心に刺さる。
確かにみのりと再会したあの時も後方に控えていたのは、
秘書の吉田ではなく文兎だった。
(裏があるとは思ってたけどいったい何をしようとしてんだよ、兄さん!)
唇を噛み締めていると、
追いついた太一が道路の前できょろきょろと辺りを見回す。
「あれ? おじちゃんどこに行っちゃったの?」
泣きそうなのを堪えながら山波を探す姿が痛々しい。
どうやって慰めたものかと考えていると、横で碧が顎に手をあてた。
「やはりこうきましたか……」
ある程度予測していたのだろう。
自分があの時もっと断固として反対していれば、
こんなことにはならなかったかもしれない。
(そうだ。俺がなんとかしなくちゃ)
決意して、碧を見る。
「藤端へ……家へ戻ります」
これ以上みのりたちに迷惑をかけるわけにはいかない。
坂を下りようとしていると、遅れてやって来た小越が目を瞬かせる。
「何がどうなってるんですか?」
そのさらに後ろでは、野木崎が苦しそうに肩で息をしていた。
「ぜーはーぜーはー、だからみんななんでそんなに走るのが早いのよ」
話すのもやっとの状況できっちり非難してくる。
すみません、と内心で頭を下げつつ横をすり抜けると、
みのりが駆け寄ってきた。
「私も行くわ!」
聞き捨てならないことを告げられ、涼介は目を瞠る。
みのりを守るために行くというのに、
彼女が敵陣に踏み込むなんてあってはならないことだ。
涼介は立ち止まり、勢いよく振り返る。
「いや、みのりさん。君は……」
説得しようとみのりの腕を掴もうとした時、
場違いなほど明るい声が聞こえてきた。
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