Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
九
IB
「あー、そうよねー」
「紅、どうしたんだい? くしゃみかい?」
碧が野木崎の声を遮り、心配気に紅へ近づく。だがみのりは
野木崎の言葉を最後まで聞いてしまった。
『あなたたちラブラブだものねー』
自分以外の人間が涼介と紅の関係に気づいているとは思っても
いなかった。
胸が締めつけられるように痛い。
心のどこかで自分の思い込みなのではないかと淡い期待を抱いていた。
だが、野木崎という第三者までもが認めているのだ。
これで失恋は確定してしまった。
(わかっていたけど、やっぱりつらいわね……)
今すぐ布団を被って泣いてしまいたい。
しかしこんな場所でできるはずもない。
みのりは唇を噛んで必死に溢れ出しそうになる涙を引っ込めた。
数歩先で涼介が太一を挟んで野木崎と楽しそうに笑い合っている。
あんなに近くにいるのに、とても遠くに感じた。
自分だけが取り残されたような疎外感にみのりは下を向く。
「話もまとまったようですし、そろそろここから離れませんか
お嬢様?」
おもむろに碧が声をかけてきた。
「え? ええ。そうね」
どうかしましたか。不思議そうな顔で覗き見てくる側近に、
みのりは慌てて顔を振る。そして、碧から逃げるように少し離れた
場所で立っている梅田のみと雪姫へ話しかけた。
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