Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
二
F
「そうだったの……。お祖父様はいくつのときに亡くなられたの?」
みのりは相反する感情をもてあましながら、涼介へ見る。
「7歳の時かな? 以来、俺はなんだか上手く笑えなくなった。
学校でもぼっちではなかったけど、なんかどこか一線引かれてたし
引いてたから。けど……」
「え、それって初めてあなたと会ったくらいの頃?」
青年からの答えに驚き、話を遮る。
川での出来事は今でも若干のトラウマになっているほどの思い出だ。
家庭の事情を聞いてしまった今その話が持ちあがり、
みのりは何とも言えない気持ちになった。
「そうさ。あの時俺は本当に世界にたった一人の気分だった。
けど、碧さんが俺を見つけてくれた。あの人には感謝してる」
「そうだったの。だからあんなに碧のことを慕っているのね」
随分心酔していると思ってだけに、理由を聞いて納得する。
きっと幼かった涼介にとって碧が救いだったのだろう。
ホッコリした気分で眺めていると、ふいに涼介が陽気に肩を竦ませて
見せた。
「そういうこと。まあ、もう一人俺の人生変えた人間とも出会った
わけだけど、君って本当に最悪なこと言うからさ。
トラウマだよ、ホント」
「人生を変えたってなによ? あの川でのことを言ってるの?
あれはあなたが私に友達がいないでしょうなんてひどいことを
言ったんですからね!」
さっきまで神妙な面持ちだったのに、
気を許すとすぐに憎たらしくなる。
みのりはムッとした表情を隠しことなく涼介へ詰め寄った。
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