Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
二
IA
(市長に想われているなんて言うんじゃなかったな……)
だが、黒塀で話したときの雅秋の表情は確かに弟を想う兄のそれ
だったのだ。そういう眼差しを向けられるようになったのも、彼が
妻を得たからだというのだろうか。
(そんなの自分勝手すぎる。涼介が何をしたっていうのよ!)
大人に振り回されるのはいつだって子供のほうだ。
みのりは胸の痛みを逸らすようにギュッと胸元のシャツを掴む。
(あの川辺で仲良くなっていればよかった)
そうすれば自分も涼介も寂しい思いをしないで済んだかも
しれなし、意地を張らなくても素直に甘えることができた
かもしれない。
(やだ、これじゃあ、私がこいつのことを好きみたいじゃない)
ないない、と心の中で一人突っ込みを入れ、涼介の顔を見ると
目が合った。瞬間、一気に熱が顔へ集中する。
(え? 嘘でしょう。本当に? 私、涼介のこと好き、なの?)
耳鳴りのように脈打つ鼓動に、みのりは自覚せずには
いられなかった。あんなに反発していたのは、素直になれなった
反動ゆえだったのだろうか。まるで癇癪持ちの子供のようだ。
これまで涼介にとってきた態度が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
(嘘でしょう。今まで悪い印象しか与えてないじゃない。
絶対に嫌われてるわ……)
さっきだって呆れた顔をしていた気がする。
ちらりと涼介を窺うと不思議そうな顔で見つめられていた。
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