Gold Plum
第五章
自覚
〜みのり&涼介の場合〜
一
D
「なんであんたと一緒に帰らなきゃいけないのよ!
私は黄金梅を実らせるまで絶対に帰らないって決めたの!」
何言ってるんだ。
段々と怒りが湧いてきた。
まったくこの子は何もわかってない。
(君とあの人はただ想いがすれ違ってるだけなんだぞ!)
自分の両親とは違い、ずっとみのりのことを彼女なりに見守っている。
(だから、きちんと話し合うべきなんだ!)
美都子は当主だから一筋縄ではいかない人間だろう。
だが、それでも母親としての筋は通っている気がしたのだ。
ただ逃げるだけでは解決しない。
自分は太一の祖母との一件でそのことを痛感した。
だからこそ、それをみのりにもわかってほしかった。
涼介は盛大に息を吸い込み口火を切る。
「だったら尚更帰るべきだ! そして、あのわからず屋の美都子様に言うんだ。
結婚なんてまっぴらだ、当主も継がないってな!」
だが、向き直ったみのりの瞳はこちらの願いとは裏腹に、
怒りの色を帯びた。
(これって完全に修羅場だよな……)
冷めた自分が頭の隅でぼやいていると、近くで太一の無邪気な声がする。
「そうだよねー。家出してるんだから帰っちゃダメだよねー」
「え?」
太一のセリフに老年の三人が驚きの声を発した。
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